派遣の資格も取れないSES企業は無くなれば良いと思うというお話。

7月 12, 2019

今回の記事は、客先常駐は派遣とSESどちらが良いのかイマイチ分からないという若手向けの内容になります。

私自身の考えは「客先常駐させる会社が本当にエンジニアのためを思うなら派遣とSESを使い分ける事こそ最適」と考えていまして、派遣の資格を取らずして客先常駐ビジネスをやってる会社は全て潰れれば良いと思っています。

ましてや派遣事業の資格も取らないくせにSESは派遣より良いとアピールする企業なんて論外です。

今回のお題目は以下の通り。

何故SESではなく派遣なのか?

よく混同されがちですが、客先常駐=SESではありません。
客先常駐する場合、準委任契約もしくは派遣契約を結ぶことが一般的です。
それぞれの主な違いは以下の通り。

◆SES(準委任契約で客先常駐)
 ・仕事の指示や勤怠管理は現場の人ではなく自社側(派遣元)で行う
 ・派遣法の対象外
 ・契約書に書いてある内容を双方が合意すれば原則なんでもあり

◆派遣(派遣契約で客先常駐)
 ・仕事の指示や勤怠管理は現場の指揮命令者が行う
 ・派遣法の対象となる
 ・30日以下の短期間契約は不可
 ・契約内容について派遣法で定められたルールがある


重要なのは”仕事の指示を誰がするか”という部分と、”派遣法の対象になるかどうか”です。

客先常駐というのは経験した方なら分かると思いますが、現場には見ず知らずの人が多くいます。
現場のプロパー、他のパートナー企業から来ている方々・・・

しかし、SESで常駐している場合、仕事の詳細な指示を現場のPLやPMが出すことはできません。

つまり自社側の人間が指示、もしくは自分自身で能動的に動かないといけません。

そんな中で1人常駐を任命された場合、どうなるか分かりますか?
特に全く実務経験がない人が初めての現場で1人だったらどうなるか分かりますか?

普通に考えて悲惨なことになります。

現場の方も結局任せられそうな仕事しか依頼出来ず、単純作業だったり技術や知識が無くてもできるような仕事しか任せられないという状況が発生します。

本来SESは指示を出さなくても能動的に動ける即戦力の人が使うべきものであって、経験が浅い若手や未経験が使うべき契約体系ではないというのが私の結論です。


SESは技術力の提供、派遣は人員の提供です。

派遣社員は一時的なリソース不足や社員と同じように働いて欲しい時に活用されます。
現場サイドで仕事の指示を出せるので、多少力不足だとしても潜り込めるチャンスが多いです。

出来ることしかやらされないのと、少しサポートすれば任せられそうな仕事をやれるのとでは成長速度は全然違います。

仕事の指示を出せない若手SES社員に任せられる仕事はどうしても定形業務になりがちです。

例えば・・・
・仕様が固まっているものをコードに書き起こす
・ドキュメントを作成する
・テストケース仕様が決まっているものをテストする
・オペレーションマニュアルに則って単純作業を行う

(内容はフリーランスについてですが)SESとはつまりこういうことです。

これがTwitter界隈で嘆かれているスクショ芸人やテスター要員の正体です。
きっと自社の人にもろくにサポートされず、現場の人も扱いに困った果ての結果でしょう。

ベテランSES社員であれば、受注した案件に対して「クローズまでよろしく!」という依頼の投げ方をしてもしっかりやってくれるので問題ないという訳です。

SES企業は結局リスクを負いたくないだけ

これまで客先常駐という働き方は多くの問題を引き起こしてきました。

・派遣される人が不利益を被る
・多重の商流によって本人が受け取れるお金が減る
・不要になったらいつでも切れる

そういった問題を規制するための法律が派遣法です。
SESだとエンジニアは派遣法に保護されません。
でも派遣元企業は派遣事業の資格を取らなくても人を派遣できてしまう。
派遣先企業は無茶な要求を契約書に書いて盛り込める。

契約書に書いてある内容は双方が合意すれば原則なんでもありなので、派遣元が有利な内容を盛り込めるならエンジニアにとってメリットはあるかもしれませんが、派遣元と派遣先でどちらが立場が上かなんて考えるまでもなく分かりますよね。

客先常駐の契約をSES(準委任契約)にする場合、派遣元企業と派遣先企業にしかほぼメリットがありません。
結局エンジニア自身にはSESで客先常駐するメリットって無いんですよ。

フリーランスにとってSES(準委任契約)という働き方は必要です。
企業に属さなくても客先常駐という仕事が出来るので。
※というかフリーランスの場合SESでしか客先常駐できない

◆SES契約で企業側(常駐先)が得られるメリット
 ・派遣契約と比較して契約が簡易的になるため事務手続き工数が減る
 ・派遣契約だと有期雇用の人間を3年以上雇えないが適用外になる
 ・派遣法で禁止されているような内容でも契約で合意させればやりたい放題

◆SES契約で企業側(派遣元)が得られるメリット
 ・派遣事業の資格が無くても人を派遣できる。
 ・派遣法の対象外なので実質やりたい放題
 ・無期雇用の正社員で雇わなくても客先常駐させられる
 ・他のSES企業から引っ張ってきた人でも自社の人間かのように人を出せる
 ・適当に雇っても契約社員(有期雇用)として契約期間を短くしておけば痛手を負うことはない
 ・一定の年齢を超えたら有期雇用契約を更新しなければ簡単に人を手放せる


若い内は大したスキルがなくても人手だけ欲しいという案件は一定数あります。

SES企業なら割と簡単に入れると言われている理由はこれです。

「まずはSESでサクッと実務経験を積んだほうが良い」とか、「SESはいつまでもやるような働き方じゃない」というのは若いうちだけ良い感じに使い捨てしたいというSES企業のステマです。

若いうちは若さとそれなりのやる気だけでアサインできる案件に入れて、年齢と実力が伴わない人間になる頃に辞めてくれたほうがWin-Winですから。

正味な話をするとSESでは現場で手厚く育ててもらえないので、何かしら職歴を作らないことには単純作業しかアサイン出来ないという背景もありますけど。

その中でたまたまポテンシャルを発揮して成功した人がいればそれを成功例として取り上げれば良いですからね。

これぞ氷山の一角ビジネス。

派遣会社が派遣契約で負うリスク

派遣契約を結んで客先常駐させる場合、派遣法が絡んできます。
派遣法を簡単に説明すると、客先常駐する社員が様々な要因で不利益を被らないように守るための法律です。

契約金を本人に伝えることや、マージン率の公開、長期契約の場合は社員登用の機会付与等々・・・
こういった本来あるべき権利がSESで働く人は享受できません。

では何故SES企業は派遣会社にしないか?という疑問が浮かぶと思いますが、派遣契約を結ぶためには派遣元企業にとって多くのリスクがあるからです。主な内容は以下の通り。

・派遣事業の資格取得時に純資産2,000万以上という規定がある(ハードルが高い)
・派遣事業の資格取得時に費用がかかる(オフィスに関しても規定があり初期費用は更に増える)
・有期雇用も可能だが、1年以上雇用する場合は正社員登用の努力義務が課せられる
・正社員で雇うと会社側からは簡単に解雇できないので教育していかないと後々痛手を負う
・派遣契約の場合、基本契約/個別契約/原籍確認等々、事務手続きが圧倒的に増える
(エンジニア自身が手続きする訳ではないのでエンジニアには何も関係にないが会社側の負担増)
・上記の規定や義務を行い、派遣の資格を失うとビジネス継続が困難になる

つまり派遣会社で社員を雇う場合簡単には解雇できないため、給与を絞る等して自主的に退職を仕向けるか、しっかり育てるかの二択になります。

なのでしっかり育てる方針だった場合、入社する人はかなり厳選します。
誰でも良い訳ありません。

客先常駐事情は刻々と変化している

いつもツイートで言っていますが、大手SIerでは偽装請負の監査が年々厳しくなっているため「派遣契約以外はNG」だったり、「1人SESの常駐はNG」というところが増えています。

うちの現場は上記の制約に加え、有期雇用の派遣社員もNGになりました。
※これは派遣の3年ルールというものが背景にありますが今回は割愛

つまり今の取引先を維持するには無期雇用の正社員として社員を雇わないといけないのです。

また、色々と現場サイドで指示を出せるので研修や教育も受けられます。
うちの現場で開催されている研修制度は派遣社員は受けられますが準委任社員は受講不可となっています。

これからSESは更に元請けに入りにくくなるでしょう。

商流はさほど関係ないという意見もありますが、いろいろな考えがるのでそれは否定しません。
ただ 一つだけ言うなら元請けの労働環境の良さ、携われる業務のレベル、周囲の人間のレベルは別格です。

私はこういった環境で働いたほうが間違いなく成長スピードも速いと思いますし、ワークライフバランスも取りやすいと考えています。

エンジニアの成長、豊かな生活のためなら派遣会社が抱えるリスクぐらい喜んで引き受けますわ。

そんなSES企業があるなら見てみたいものです。

結論どうすれば良いのか?

未経験が最初の一歩目として経験するには派遣の資格を持っている企業もしくは、複数人のチームで常駐させてくれるSESもしくは、コネで入って信頼できる人と一緒に常駐するのが良いかと思います。

しかし、プログラマ界隈は開発が始まったら一気に人員が必要になり、終わったら解散するという特性上、派遣契約って結びにくいんですよね。だからSESばっかりなんです。
※たまに派遣は契約に時間がかかるから駄目という人がいますが、そんなことありません。弊社では採用から現場就業まで大体一週間程度で終わりますから

それでもプログラマを目指したいのであれば、良いSESの見分け方を覚えるしか無いかなと思います。
チーム単位で同じ現場に客先常駐かどうかぐらいなら面接で聞けるでしょう。

インフラエンジニアであれば派遣1択かと思います。
自社のサポート体制に期待するより現場に管理を委ねたほうが期待値高いですから。

会社のホームページを見れば派遣事業の資格を持っているかどうかぐらいは分かります。
主要取引先も公開されているようであれば大手かどうかもある程度分かるでしょう。
面接で大手に行ける割合、レベル感ぐらいであれば聞けるでしょう。

何はともあれ最初の一歩が本当に大切です。
エンジニアとして業界に失望するのか、悪い会社も多々あるけど自分は良い環境に入れるのか。

最初に良い環境を得られればエンジニアとして成功する確率も格段に上がります。

という訳で最初は独学で少しでも勉強し、多くの資格を取って少しでも良い所に入った方が良いです。