インフラエンジニアのキャリアについて考える
どんな仕事をしていてもキャリアについて考えることが一度はあると思います。
今日はインフラエンジニアのキャリア形成についてよく言われる言葉とその真意について書いてみます。
エンジニア界隈には上流工程、下流工程と呼ばれるものがあります。
これはインフラにも開発にもあります。
ざっくり工程で分けると、下記の工程があります。
- プリセールス
- 要件定義
- 設計
- 構築(開発)
- テスト
- 運用、保守
1〜3は上流工程、4〜6は下流工程と分類されることが一般的です。
上流と下流で大きく何が違うかと言うと、上流工程は非定型業務、下流工程は定型業務ということでしょうか。
非定型業務とは・・・
自分の考え、判断をもとに業務を進める業務
定型業務とは・・・
仕様が固まっているものを構築したり、マニュアル化された業務を行うこと
とまあ、ここまでは他のWebサイトにも載っているような内容なのであっさり目にしておきます。
各工程に求められるスキルは?
未経験の頃に営業や、キャリアアドバイザー、転職エージェントからよく言われるのが、「経験の浅いうちは下流工程で実務経験を積み、徐々に上流工程にステップアップしていきましょう」という言葉。
恐らく耳にしたことがある方も多いと思います。
しかし言われたことを素直に信じるのは危険です。
「下流工程の経験を積む」=「上流工程に行けるようになる」では無いです。
1つのインフラ導入案件を例に求められるスキル見てみましょう。
◆プリセールス
→技術トレンドのキャッチアップ/顧客課題の発見能力/グランドデザインの作成/プレゼン能力/営業トーク
◆要件定義
→ヒアリング能力/問題解決能力/ドキュメント作成/アイデア/顧客折衝
◆設計
→幅広い製品知識/アーキテクト/経験をもとにした問題回避能力/ドキュメント作成
◆構築(開発)
→製品(言語)に関する経験/作業効率/チームワーク
◆テスト
→正確性/エビデンス取得/継続力
◆運用・保守
→正確性/責任感/チームワーク
他にも求められる能力はあると思いますが、パッと思いつくものだけ書き連ねてみました。
そもそも求められるスキルが全然違うことが分かるかと思います。
先ほど述べた「下流工程の経験を積む」=「上流工程に行けるようになる」ではないというのはこういうことです。
下流工程の経験が上流工程に活かせるかと言うと答えはYesです。
上流工程で活躍している人の共通点は?
上流工程で活躍している人にはこんな共通点があります。
- ものごとを0か100で考えない(YesかNoではなく折衷案や代替案を提案できる)
- 顧客の考えや課題を汲み取り解決までの提案ができる(自分の課題ではなく他人の課題を解決する)
- 自分の担当外の仕事も積極的に受ける(競合を蹴落とし、案件の受注幅を広げられる)
- レスポンスが早い(ビジネスはスピード、エビデンスを取ってから回答をするのではなく、一次回答をしつつ裏でエビデンスを取りながら別の仕事を進める)
上流工程の仕事は何も決まっていないことから、顧客要件をもとに仕様を固めていくことです。
いくつものアイデアを出し、要件に合わないものは切り捨て、徐々に提案のクオリティを上げていきます。そんなものをいちいち完璧に作っていたら話になりません。
総括すると「柔軟な思考、相手の考えを汲み取った対応、素早いレスポンス」が求められます。
下流工程とは全然違いますね。
同じ仕事を長く続けると癖がつく
運用や保守を行う方々には「システムを絶対に止めてはいけない」という前提のもと業務を行っている場合が多いかと思います。
コマンドを1つ打つのにも細心の注意を払います。
アップデートやパッチ適用についても同様です。
この工程を長く続けると「石橋を叩きすぎる」、「余計なことはやらない」という癖がつきます。
ではテストはどうでしょうか。
テストについては色々なテストケース、全ての機器に同様のテストを行う、地道で正確な作業が求められます。
間違いがあると納品後クレームとなりますので細心の注意を払って業務を行います。なので「完璧な仕事を行う癖」がつきます。
構築や開発はどうでしょうか。
一般的には自社開発や請負で行うことが多いので、限られた予算というものがあります。
なので当初の依頼になかったものや、仕様にないものは断るケースが多いです。
こういった業務を長く行っていると「自分の担当範囲以外は断る」癖が付きます。
総括すると下流工程に求められるのは「任された仕事を完遂する、与えられた課題を解決する」というところに尽きます。
下流工程で仕事の癖を付けると後々苦労する
たまに下流工程でしっかりと10年近く経験を積み、30歳過ぎで上流工程にシフトしてくる方がいます。
そういう人に割と共通するのが、「臨機応変に動けない」
製品知識とかは十分なので仕様を調べるとかは全く問題ありません。パラメータの決定等についても会話についていけます。
しかし、要件以外のことは完全にシャットアウトしてしまうとか、提案に含めないという人は結構多いです。
自分の実力以上に背伸びをしないということは自衛の意味でも悪くはないのですが、そういう意味でやらないってのと違うんですよね。
10年近く決められたことに従って仕事をやってきた人や、手順にないことは絶対にしないと教えられてきた人がいきなり臨機応変にやれって無理な話なんですよね。
「上流工程は今までと違うんだ」と、なんとか変化しようと頑張れる人もいますが、大半の人は中々変わることができずに慣れた下流工程に戻っていくか、融通の利かないSEとしてなんとか生き延びているような人も実際います。
とはいえ、いきなり上流工程に行くのはハードルが高いのも事実です。
自分が触ったことが無いものを提案したり、顧客と技術的な会話をするのも最初はかなり辛いです。
下流工程から上流工程へステップアップするには?
冒頭にも書きましたが、「経験の浅いうちは下流工程で実務経験を積み、徐々に上流工程にステップアップしていきましょう」という言葉を言ってくるのはエージェントや営業の人間です。
彼らの仕事は仕事を決めることです。
エンジニアの仕事を決めることで報酬を得ています。
そのためにはチャレンジ案件よりもこれまでの経験で決まる見込みがあるところを優先する傾向があります。
なぜなら1人にチャレンジ案件を決めることでその人の契約金が10万アップするよりも決まりやすい案件を2人決めたほうが決定率も高いし、得られる報酬も高いからです。
チャレンジ案件にアサインしてもらうためには営業やエージェントと密な関係になることもキャリアアップには欠かせない要素となります。
もちろんこの人なら工程を上げても恐らく決まるだろうという実績も必要です。
下流工程から実績を積んで徐々に工程を上げていくというのはもちろん王道です。
しかし上流工程で活躍したいのであれば下流工程に長居するのは正直おすすめ出来ません。
- ある程度経験を積む間に何か突出した実績を作る
- ポテンシャルの高さがアピールできる材料を仕込む
- 仕事の癖が付く前に工程を上げていく
営業やエージェントを納得させるにはこれらの結果を出さないと思うようなキャリアアップは出来ません。
希望を言うだけなら誰でもできます。
結果を残すのは一部の人間にしか出来ません。
自分が業務を選びたいのであれば、どうやったら選べるようになるのかということを理解するのも大切です。
稚拙な文章ですが、みなさんのキャリア形成の一助となれば幸いです。